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海北によるセルフライナーノーツ「(   ) トラスト オーバー サーティー」
2013年04月09日(火) 12:01更新

1.30
「さんじゅう」ではなく「サーティー」と読みます。
同世代と話すとき、気がつけば後輩がどんどん増えて来たねっていう話によくなって、それでも先輩方もまだまだ元気で見事なまでの板挟みな感じに、強烈な不安に襲われたりすることが、最近妙に増えたなぁと。苦笑。
僕らは何かを残せているのか、はたしてこのままでいいのだろうか。悩んでそれでも楽しく笑う。先輩方にもきっと同じ時期があったと思うし、後輩もきっと同じ気分になる時が来るんだろうと、なんだかここへ来てようやく色んなものが解り始めた気がする。だから30代は、面白い。そんな歌です。すべての30代への、エールソングです。吉田拓郎さんの「ローリング30」へのオマージュであったりもします。
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2.Over
この歌の元になったのは、プロデューサーである竹内さんとの何気ない会話の際、「列車のサビであの頃はよかったって歌ってるけれど、30過ぎてみてさ、海北君は思った事、ある?」って言われた事が妙に引っかかって。列車を書いた当時の心境としては、「今が良けりゃそれでいいんだ!」みたいな刹那的な世の中の風潮に対しての強烈な皮肉を込めて書いたつもりだったので、正直その着眼点が僕には無くて。
ファンの方からも「昔と今とで、受け取り方が変わりました。」って話はよく聴いていて、確かに僕もあの当時と今とで歌に持つ印象って随分変わったなぁと思いまして。
「あの頃はよかったなんて あの頃だから歌えたのかな」
この一説から膨らまして出来た歌です。僕たちはいつだって、誰かの何かに、なりたい。
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3.シルエット
元の素材は今作の中で一番古く、ロストアンドファウンドの頃に原型はありました。最初はピアノの弾き語りで、五輪真弓さんの「恋人よ」的な下降コードのマイナースケールを使う曲が歌いたいなぁと作り始めて行き詰まり、しばらくそのまま寝かせていた曲です。三井くんが「あの曲に合いそうなアルペジオ考えたんだけど、やってみない?」と掘り起こしてくれました。
聴き所はまさしく三井くんのどうやって弾いているのか手元が音で見えてこない秀逸なアルペジオです。
エンディングで一度メジャースケールに転調するアイディアは源ちゃんが出してくれました。
LOST IN TIMEらしい曲だと思います。
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4.雨が降る夜
作詞作曲 一色徳保(つばき)くんによる、LOST IN TIME初となる提供曲を歌いました。
元々の話はつばきフレンズのCDを作る話が立ち上がった2011年の暮れで。バンド仲間みんなで「一色くんのステージ復帰より先に、作家として復帰してもらおう!」っていう計画が最初にあって、そこから少しずつ形を変えてあのつばきフレンズのアルバムになったのですが、僕はなんとなく最初にあった「作家としての一色くん」に対しての興味がずっとあって。去年彼がステージに帰って来たライブの打ち上げの時に、その時期僕の筆がぱったり停まってしまった事もあり相談をしたら「じゃあ、書くよ俺」って言ってくれて。メロディラインに彼のキラキラしたポップさが出ていて、歌っていても聴いていても嬉しい気持ちになります。歌詞に少しだけ僕の言葉も入れさせてもらい、この形になりました。
いつかつばきでも歌って欲しいなぁ。みんなも聴いてみたいよね?
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5.最後の頁
この歌が、去年筆が止まって苦しんでいた僕の、すべての突破口を開いてくれました。
僕は何故、歌っているのか。何故、歌えているのか。そして、それはいつまで続けられる事なのか。
未来はいつだって不透明で、それは今までだって同じ事で。
それでも僕ら人間には、いや、人間だけじゃなくこの世界のありとあらゆるものには、必ず終わりがあって。
繰り返す日常の中、僕たちは否応無くその事実から遠ざかってしまう。自分には関係のない事だと、勘違いしてしまう。
だから、いつも、別れは突然訪れる。準備もなしにやってくる。
いつか終わる僕の物語の一番最後を、描いて置きたいと思い、ペンを執りました。
テーマとしても、楽曲のスケールとしても、正直重たい曲です。
でも、だからこそ、僕は歌いたいし、向き合いたい。そんな歌です。
みんなが笑顔で、よくがんばったねって言ってくれる様な結末を探す日々を、ここから始めようと思います。
勿論まだ終わりにするつもりは、全然ありませんよ。みんなと見たい景色、鳴らしたい音、描きたい未来、まだまだ沢山ありますからね。

海北大輔 / LOST IN TIME